はてなの毎日

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白髪染め

 実は一年ほど前から白髪染めを定期的にしている。といっても市販の安易なもので、髪に薬剤を塗りつけて5分後に洗い流せば終わりという代物だ。細かいところまで見ると随分雑な仕上がりになるが、そこまでこだわりもないのでこれで十分である。染髪などするつもりは毛頭なかったが、一度ふとしたきっかけで始めたところ止められなくなってしまった。

 白髪を染めてみると確かにわずかに若返ったような感じがする。幸い私は量的変化はいまだ少ないので、もっぱら色の問題で済んでいる。このところ急に白髪が増えたので自分もそういう歳なのだと一度は諦めた。だが、染めてみると失った何かを取り戻したような僅かな錯覚を味わうことができるのである。

 しかし、顔面にたたまれた皺やしみは隠しようもない。それにともなって声もカツゼツも老年のそれに知らず知らずのうちに変化している。髪の毛を黒くして若さを取り戻したように感じることは今だけの特権なのかもしれない。もう何年もすれば髪だけ黒くて顔がふけていることに名状しがたい違和感を感じることになるのは明らかである。

 かつて私は加齢に対してはすべて受け入れる性質の人間と自認していた。無駄な抵抗はせず、潔く老いを受け入れなるようになるのがよいと思っていた。髪に関してもカツラや染髪にたいしてある種の軽蔑さえ抱いていたのだ。それがいままさに老いの中に突入してみると急に意気地が無くなってしまったのである。歳をとるというのはこういうことなのか。高齢者の若作りに対する哀れみにも似た感情を、いまは素直に笑えなくなっているのである。