はてなの毎日

日々の思いを、思うまま

文化の世界戦略

 韓流とよばれる韓国ブームは中高年層から若者層に拡大しています。中高年はドラマに、若年層はおもにアイドルに惹きつけられています。韓国のこうした大衆文化の特徴は一言で言えば分かりやすさにあると思います。
 韓国ドラマは非常に極端な人物設定と、少々の無理を承知で進む展開、大げさな人物の所作など一部の演劇や、漫画やゲームに共通する要素を持っています。観る側の想像力をあまり要求せず、濃厚に味付けされた料理を提供するという作り方をしています。
 最近のアイドルも整形したかのような同じような顔立ちの人物と、紋切り型のコンセプトのものが多く、かっこよく美しいのですが、どこにも個性というものが感じられない、取替え可能な感じがするのです。だから、予備知識なしにファンになれるのでしょう。極端なことをいえば、日本の若者の心の中では、日本語ができない日本のアイドルくらいに考えている人が多いと思います。「少女時代」はあくまで「しょうじょじだい」であって、「소녀시대」ではありません。韓国には味のあるそして日本には決していないようなすばらしい歌手がたくさんいるようですが、日本では紹介されません。
 韓国の文化戦略はこうした汎用性というか、世界に受け入れられるものを目指しているという点が特徴的です。韓国の国民性とか、伝統とかは極力表現していないように感じます。たとえば韓国の時代劇ドラマをみても、そこに韓国人の精神はなかなか読み取れず、ファッションとしての韓国文化が見えるだけのような気がしてならないのです。

 私は韓国のそうした文化戦略を批判するつもりはまったくありません。むしろ、この点についてはわが国も学ぶ点が多いと思っています。日本文化の海外での評価は高いと言われています。しかし、これまで積極的に日本の文化を海外に発信するという努力は顕著ではありません。日本の文化は繊細で複雑なので、外国人には分かるはずがないという暗黙の了解がその意欲を削いできました。しかし、それでは私たちは本当に孤立してしまいます。
 韓国のように自国文化をいわばファッションのレベルにして世界に発信するという方法もありますが、これは表面的な理解しか得られない。すでに日本文化として世界に受け入れられている漫画やアニメーションがそのレベルのものであり、かなりの成果をあげているのは事実です。しかし、それより深い情報発信の方策はまだありません。

 これは、多くの方が述べていることですが、まずは日本文化を自国民が理解することの重要性があります。そしてそれを外国に発信することを前提とした外国語教育がなされる必要があります。
 「わび」「さび」「花見」「間」「空気を読む」「思いやり」「縁」「義理」「人情」などといった私たちが前提としている文化、行動様式を外国人に説明するための外国語力を身につけさせることがまずは文化の世界戦略の第一歩ではないでしょうか。