はてなの毎日

日々の思いを、思うまま

異邦人の視点

 文化を共有しない地に訪れた人が、旅先の風景を描く時のことを考えてみます。極端な例によって話をわかりやすくするならば、初めて訪れた星を描写する場合です。
 表現手段が言葉ならば、言葉はその文法に従って使われ、既存の言葉で表現されます。たとえば隆起した地形を見れば「山」というはずです。しかし、山という言葉にはその他にたくさんの意味があり、その語にまつわるエピソードが存在します。それらが切り離せないのが言葉の特徴であり、宿命でもあります。
 そういう使い古した言葉でしか異境の地を表現できないのです。旅の文学作品には様々な名作がありますが、それらに描かれているのは、結局作者の内面で培われてきた世界観であり、現地の景物そのものではないということになります。
 旅の文学をもう一度読み直してみなければならないと考えています。