はてなの毎日

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外野の意見

 農業分野がこれまで厚い関税の障壁で守られていたために、産業としての成熟を妨げられているという論があります。これはTPPに関する議論の中で、農業に関する例外措置に対する反論という文脈で現れるものです。乱暴なまとめ方をすれば、日本の農業は過保護のもとに自助努力を怠ってきた。いっそのこと逆境に立たせれば何とか生き残る努力をするようになるだろう。だから農業分野の例外措置はとらないほうがいいというものです。一見合理的と考えられるこの説ですが、どうも根本を間違えているような気がしてなりません。

 農業は他の産業とは異なる点が多々あります。例えば農地の管理は一朝一夕にゆくものではないないでしょうし、一度途絶えた農地をもとに回復するにはそれなりの時間がかかるはずです。また例えば米や麦などの場合は日本の伝統文化との深いかかわりがあり、それをビジネスの尺度だけで考えるのは極めて危険なことです。

 食糧の自給という問題はよく取り上げられますが、実は農業は日本人にとって根幹となる精神的要素の位置するものであり、それを放棄し、あるいは採算性だけのものに転換することは、日本人の精神世界そのものに働きかける大きな影響をもたらすと思うのです。どうも資本主義の原理だけにとらわれてしまっている人が多すぎる。資本主義は多くの虚栄心や優越感、その反対の差別意識を生み出しますが、現実世界への円満な融合とか豊かな精神世界の満足とかには程遠いものです。

 私たちは農業政策について論じるときに、農業のことを知らなさ過ぎる。もっと現実を見据えて社会の動きを観察するべきだ。単なる外野の意見なら捨ててもよい。大切なのは真実の把握とそれにそれに対するリアクションだ。