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富士山が世界遺産に登録された意味

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 富士山が世界遺産に登録されました。世界遺産登録の意義は当初の保護の目的よりもいまはどちらかというと観光資源としての格付けに利用されている感があります。もちろん今回の登録もそれを見込んでのことでしょう。私は自然保護という観点から今回の登録を歓迎します。議論されている保護の資金としての入山料徴収もぜひ実行すべきだと考えます。

 富士山が日本の象徴であるというのは万葉以来、文学の対象になってきたということが何よりの要因です。山部赤人の「田子の浦ゆ」の歌はもちろんのこと、竹取物語の結末などが表すように、この山の存在が日本人をひきつけてきたことは確かです。連山ならぬ独立峰であることもさまざなな伝統的美意識と結び付けられて賛美されてきました。

 

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 富士山が信仰の対象であるということも重要です。各地にみられる浅間神社や関東地方に点在する富士塚などはその信仰を今に伝えるものです。私が少年時代に生活した千駄ヶ谷の富士塚などはかなりの大きさです。富士を模した塚の上から富士を遥拝するという不思議さも解き明かしたい民間信仰です。また、このような形に残るものだけではなく、無意識の心理的伝承というものも見逃せません。子どもに山の絵を描かせようする時、親が手本としてなぜか富士山のような形を描くことや、それに影響された子どもたちが富士山の絵を無意識のうちに描いてしまうことなどは、文字にならない心の伝承の形ともいえます。

 また富士山が火山であることも日本の象徴にふさわしいものです。近年、火山活動の復活が噂されていますが、真偽はともかく富士が大規模な噴火を繰り返してきた火山であることは事実です。それは一人の人生にとっては長いサイクルですが、歴史を語る上ではある意味頻繁に繰り返されてきました。溶岩の威力は青木ヶ原の樹海に行けば実感できます。いつ噴火するか分からない火山であること。そしてそれを知りながら寄り添いながら生活をしている日本のあり方、溶岩の作り出したさまざまな地形や清浄な地下水などの恩恵を受けていることなど、いろいろな意味で日本の象徴といえる山だといえます。

 

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↑ 青木ヶ原樹海にて

 

 世界遺産に登録されたこと自体は単なる格付けかもしれませんが、これを機に富士の存在意義について改めて考えてみたいと思ったのでした。