はてなの毎日

日々の思いを、思うまま

スローリーディング

  灘高校の元国語教師の橋本武さんの授業ノートを中核にした『灘高・伝説の国語授業』が文庫化されたので読んでみました。短編小説『銀の匙』を三年かけて読む、いわゆるスローリーディングで有名な授業をなさった、そのノートに当たるものです。
  スローの根本は徹底した寄り道です。文学部の学生が大学のゼミでやるような徹底した本文研究を中高生に対して行ったということです。教材に関連する余談を雑談と称して行うことは、私もしばしばあります。ただ、それはあくまで教員側の興味の範囲であり、生徒側としてはお仕着せの情報が増えるだけです。橋本さんのやり方は、その寄り道に当たるものを生徒にやらせることにあるようです。興味をもったことをとことん調べさせ発表させることにより、主体的に授業に取り組むことができるのです。
  ただし、これは多くの教材をほぼ網羅的に教えるいまのシラバスには合わず、実施には相当な手腕と覚悟が要ります。言語能力を高めることが中等教育の目標だとすれば、この急がば回れ式の授業には限りない魅力を感じます。