はてなの毎日

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坑夫の描いた近代の礎

  学生時代の恩師、田中直樹先生から御恵投いただいた『山本作兵衛と日本の近代』(弦書房)を読んで、炭坑の短くもダイナミックな歴史に深く感動しました。山本作兵衛は自ら坑夫として坑道を手掘りで掘削していた労働者であり、その様子を絵画と説明のコメントで数多く残しています。筑豊の炭鉱史を考える上での貴重な資料であり、ユネスコの世界記憶遺産に日本ではじめて登録されたということです。

  日本の石炭産業はすでにその役割を終えており、廃坑さえも保存すらままならない現状にあって、労働者自らが残した見聞に基づく記録は貴重なもので、世界記憶遺産として保存され紹介されることは重要なことであると思います。

  日本が近代化を要領よく達成できたのは石炭エネルギーの供給が安定的に見込まれていたからです。それを支えていたのが実は劣悪な条件下に生命を懸けて坑道にとりついていた炭鉱夫達であったということを忘れてはならないでしょう。