はてなの毎日

日々の思いを、思うまま

考える力を引き出すために

 職場で教育のあり方を巡って話しあう機会がありました。私の勤務校は改革という点においては実に柔軟で毎年のように制度が変わります。一貫性がないということもできますが、それよりも社会の動きに対応することの方を優先していると言えます。

 最近の教育界のトレンドの一つに、知識偏重から思考力や遂行力の育成の方に重点を移すということがあります。一方的な知識の伝授や、時間内で与えられた問題を解く要領良さの習得といった点に特化しているともいえる現在の教育のあり方を批判し、問題解決能力や、ICTなどの機器を活用するスキル、さらにはチームワークによるプロジェクト活動推進能力などを育成しようというのです。

 このようなことは、もちろんこれまでも行ってきました。学校行事や、いわゆる総合的学習の時間、さらには放課後のクラブ活動などもそういう力を身につけさせる機会として機能していました。おそらく、そういうことをより体系的に位置づけ、授業内容ともリンクさせることによってその効果を最大限に引き出そうというのでしょう。

 私は国語の教員なのですが、これまでは授業で教えるべきコンテンツがまずあって、それを伝えること、そして考査でその伝達の度合いを計測することが中心でした。しかし、もちろんそれも大切であり、継続すべきなのですが、生徒の言語能力の開発という点においては配慮が足りなかったと思います。教科書の内容を隅から隅まで教えるのではなく、自分で教科書に書いてあることに関心を持たせ、自分なりに取捨選択をして要点を身に付けられる能力を育成することのほうが大切なのです。基礎をしっかりと抑えながらも、詳細に関しては時には省略し、その詳細を読み取るための力を育成するのを優先するということでしょうか。

 このような話題になると実務的な面や、表面的スキルを追いかけるだけの浮ついた印象になるのですが、実際に自分たちでものを考えさせるとなると、問題解決までの葛藤や、様々な誘惑に打ち勝つ力が必要になっていきます。また、議論の中で自説が否定されたり、無視されるという失敗経験をたくさん積むことにもなります。そうした種々の生涯を乗り越えるための精神的な強靭さも育成する課題になりそうです。

 新しいことを始める際には様々な不安が伴います。また、一方でそれにまさる期待感も生じます。生徒のアクティブな能力を引き出すためには何をすればいいのかをじっくりと考えてみたいと思います。