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知識応用力

 先日、ある予備校の教員向けの講習会に参加してきました。その講師が強調していたのが、文科省の示した新しい学力観に対応した入学試験の導入が予備校の今後に大きな影響をもたらすとの見解です。知識量やそれを無批判に効率よく使う手際良さを競う今日の入試ではない学力判定のあり方について、今後5年間で十分に考慮し、変革していかなくてはならないということでした。

 もちろん、これは予備校の講師としての言であり、実は中等教育のありかたそのものが変わるということになのです。おそらく、まず理科社会といった内容科目が大きな変化を要求されるのでしょう。他の科目も実践的な要素を何らかの形で増やしていくはずです。究極の用具科目たる国語も、表現力や構造的な読解力、批判力に重きが置かれるようになると思います。ただ覚えておけばよいという学習法は過去のものとして非とされることが増えるのではないでしょうか。

 国語に関してさらにいえば、中等教育ではリテラシーのレベルを上げるということに重点がおかれることになります。特殊な知識を総花的に紹介し暗記させるよりも、まずは与えられた問題について自分の言葉で語れ、書ける人材を育成する訳です。その内容レベルがたとえ下がっても構わず、とにかく全体像をつかめる人材を増やすということになりそうです。

 こうした学力を測定する方法は、一回のマークシート試験ではかなり難しいので、別の新たな測定方法が必要になるのでしょう。そして、それ以上に大切なのが教育する側の意識改革です。私はこれまでの国語教育に対していつも疑問を感じながらも自らがその中で育ってきたこともあって、新しい教育方法に見合った自己改革をしていけるか大きな不安を持っています。これはやらねばならない課題であり、猶予はないわけです。

 教員生活としては晩年にあたる時期にこうした改革の時が訪れたことを、私は好機と捉えたいと考えています。このまま惰性で教育活動していてもデクレッシェンドに進むだけだったはずだったのが、いま突然の変調で抑えるが難しいコードが続出したことになります。だからこそ緊張感が保てるのです。生徒に求める知識応用力ですが、実はそれが最も試されるのが教員側であることをいま痛感しています。