はてなの毎日

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教えてあげたい

  パナソニックのコマーシャルで繰り返される「教えてあげたい」というフレーズは、それを演じる西島秀俊のキャラクターともあいまって独特の雰囲気を醸し出しています。家電の知られざる新機能を告知したいという製作側の思いを体現したものであると思います。
  さて、CMのキャラクターである彼はどうして教えてあげたいと悩まなくてはならないのかと考えてみると、少々違った見方ができます。彼は自分が知る有利な情報を他人と共有したいと思っています。設定上はどこかの企業の中間管理職のようで、パナソニックの関係者ではなさそうです。すると、独占してもいい情報をあえて共有する意欲を自主的にもったことになります。
  彼の苦悩はそれを素直に言えないことにあります。少々型破りではありますが、彼はいたって健全なサラリーマンであり、むしろ高い教養とルックスの持ち主です。自分の想いが言えないのは都市生活者であるからでしょう。つまり、密着するほど近くにいても、心理的には一定の距離を保とうとする。それができなければバリアを作ってシャットアウトするという行動様式で生きているからだと思うのです。
  富山の田舎町に住んでいた時、スーパーマーケットで買い物をしていると見知らぬ年配のご婦人から声をかけられたことがあります。これは今日は安いからお得だ、向こうの店より安いといったような内容でした。もちろんその店の関係者ではありません。その方としては善意でアドバイスしてくれたのです。
  東京で同じことをすると、善意は曲解され、場合によっては変人扱いされかねません。善意が素直に表現できないことこそあのCMのキャラの苦悩の始まりなのです。