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ホイッスラー展

 横浜美術館で開催中のホイッスラー展を観てきましたので、簡単に感想を残しておくことにします。ホイッスラーはアメリカ人でありながらパリやロンドンで人生の大半を過ごした人です。ロシアのサンクトペテルブルグにも住んだことがあります。このことと関係するのか、この人の絵画には様々な要素が混在しており、しかもそれが融合して独特の画風を持っています。美術史家は彼の絵をして耽美主義と称するようですが、作品に完結した宇宙を構築しようとした試みの一端をこの展覧会では見せてくれています。

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 ホイッスラーの絵はうすい靄のようなベールがかかっている作品が多く見られます。それは、光のあり方を作画しているかのようです。色使いは地味で、輪郭も曖昧な作品が多いように感じました。人物画も風景画も多く、それぞれに独特な味わいがあります。また日本趣味の一連の作品は有名ですが、着物や団扇のような小道具の描写にとどまらず、浮世絵のデフォルメした構図や、輪郭の朧化などの影響も受けていることが分かりました。今回の展示では江戸の浮世絵と見比べることができるよう比較展示がなされていたため、その影響の実際を理解することができました。

 自己の思うところを実行し続けた画家ということができそうですが、一人の画家の絵に対する考えの変遷がその作品を通して理解できるというところがこの展示の面白さだと思います。横浜美術館は平日は空いていて、展示の作品との距離も極めて近いため、間近で作品を観ることができます。