年内立春
今日は立春。暦上の春が始まる日です。実際にはまだ寒い日が続き、明日は雪の予報が出ています。昨年は2月上旬と中旬にまとまった積雪がありました。
ところで、今日は旧暦12月16日です。旧暦ではまだ年が明けないうちに春が来てしまうことになります。古今和歌集の春上最初の歌、
年のうちに春は来にけり
ひととせを去年(こぞ)とや言はむ今年とや言はむ
という在原元方の歌を思い出します。実は年内立春は特別な現象ではありません。かなり頻繁に起きるのです。旧暦の基準が月の満ち欠けによるのに対し、立春は太陽と地球の位置関係によるものですから、両者は無関係のものなのです。
むしろ立春と元日が重なることの方が珍しいのですが、これが万葉集巻二十巻末の、大伴家持の歌になります。
あらたしき年の初めの初春の
今日降る雪のいやしけよごと
これは元日と立春が同時に訪れたことに興を得て作られた歌です。万葉集の最後の歌と、古今集の最初の歌がいずれも立春に絡む歌であることは偶然ではないのかもしれません。
節分の豆まきに比べ、立春はあまり印象的な行事はありませんが、春の始まりを厳冬期においたことは、実は厳しい毎日を生きる生活の知恵ではなかったのかと勝手に考えてしまうのです。