漫画のような現実
漫画などで使われる絵は、簡単な線や模様で様々な場面を表現します。かつて劇画などと言われた写実的な絵にしても、実物の映像の極端な省略と変型が見られます。それでも私たちは描かれた世界に感情移入することができ、感動することができます。
私たちが見ている現実は漫画の絵のようなものなのかもしれません。自分にとって必要な情報だけを無意識に選び取り、見えていても無視することもできます。そして、多くの場合、自分の方で対象に対するものの見方を改変します。かわいい猫も、ねずみが主人公なら凶暴な悪役になるのです。
漫画が見せてくれる省略された世界は、その意味で分かりやすく、描き手のメッセージを読み取りやすい性質を持っていると言えます。