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国語教育に演劇制作の手法を

 演劇部の練習では演じる役をどのように捉えていくかについて、役者本人だけではなくそのほかの部員ともよく話し合って決めていきます。台本というテキストを身体表現に変えることが演劇のスタイルですから、これは集団による解釈であるといえます。

 読書は個人と本とが向き合う個別的な行動ですが、その前提として学校で行わなくてはならないのは、読みの正確性や公平性、社会性といったことを確認させておくことでしょう。最終的には個々の判断でテキストを解釈し反応することが求められるのですので、学校における国語学習は言ってみれば舞台に立つ前の練習をするようなものです。演劇部の練習にはランニングやストレッチといった身体的なものから、発声練習やパントマイムなどの所作の基本を練習するもの、インプロとかエチュードとか呼ばれる即興劇など多岐にわたります。その上で台本を読み込み、役を分析し、他の役との関係性を考えていく。舞台美術や音響、照明といった舞台の世界づくりを同時に進めていきます。

 国語教育を進める上でこのような演劇の制作過程の手法を参考にすることは意味がありそうです。いわゆるアクティブ・ラーニングを推進させる指導法の一種の指標になります。もちろん、演劇人が公演ごとに物を考えて行くのに対して、国語教育は生涯にわたる人生という舞台を対象にしている点が大きな違いです。この点を意識していれば、当面新しい国語教育に演劇制作の手法を活用することは検討の価値があります。