はてなの毎日

日々の思いを、思うまま

思いやる力

 古本屋で買ったアサーションに関する本を読んでいて感じたのは、現代は人を思いやる能力が育ちにくい時代なのだということでした。人間関係をうまく構築できない人が増えているといいます。私も人見知りで引っ込み思案な方なので大きなことは言えませんが、最低限の人付き合いもできないという人が残念ながら増えているというしかありません。

 アサーションは自他の権利に基づく考え方のようですが、基本は自他の立場を総合的に考え、その調和をはかろうとするものです。相手の言い分を聞いた上で、決して自己犠牲を前提とせずに両者の利益の接合点を考えながらコミュニケーションを行うという考え方なのです。

 共同体単位で物事の決定が行われていた前近代の社会においては、個人の利益というものはあまり考えなかったといいます。そこには潜在的に自己犠牲を前提とした思考法が普及していました。近代になると個人の尊厳が認識されるようになり、世界の基本が個人であるかような世界観・人生観が生まれました。すると皮肉にも、他人だけではなく自分自身の在り方までもがわからなくなってしまったのかもしれません。自分がわからなくては、他人もわからず人間関係の構築は困難です。

 人間関係の形成に苦労しているという話はよく聞く話であり、私のように教育の現場にいると生徒間、生徒と教員、教員間、あるいは家庭との関係など様々な場面において問題が生じることがあります。これをどのように考えていくか。どう解決していくかについて様々な模索がなされているのでしょう。

 思いやる力は本来、日本的な風土の中では形成されやすいものであり、伝統的な思考様式の一つであるはずです。それをあらためてわかりやすい形で提示することが、教育の現場でも必要になっています。