はてなの毎日

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学習量増加

 最近の調査によれば高校生などの学習時間が増加傾向にあるとのことです。一時期は学校教育に対する不信感や、価値観の多様性という言葉に翻弄されて従来型の学習が軽視されたことがありました。ここにきて再び学習の意義に対する見直しが起きているのはなぜなのでしょうか。

 歴史的に考えれば国民的な学習ブームが起きるのは、社会に危機感緊張感が適度にある時だと思います。現状に対する不安や不満があり、自主努力による環境向上の可能性を感じる時、学びの意欲の発動が見られるといえるでしょう。純粋な知的好奇心とは異なるものですが、これこそが学びの本質なのです。英語を学びたいと考えるのは英語を知っていることによってもたらされる利益が大きいと感じるからです。グローバル化した社会にあって、事実上の共通言語的な扱いをされている英語の知識が、社会的な技能・能力として必要と感じられるからこそ、相当な苦労をして体系の違う言語を学習しようとするという訳です。

 教育の現場にいると、最近の子供たちは知識を価値で換算することが習慣化していることに驚くことがあります。学ぶことによってもたらされる利益は何かに敏感になっているのです。価値があると感じるものには注力しても、その反対のものは避けようとする。これは若い世代に限らず、現代の日本人の基本的な考え方になっているように感じます。

 一見無価値なものにでも必ず意味がある。教員である私はこのことを伝えなくてはならないと考えています。例えば、伝統的なものの考え方や、美意識価値観などを扱う分野の学習が時代遅れとして省略される傾向にあるのは事実です。学習時間が伸びたことをただ喜ぶだけではなく、その内容や質についても興味を持ち続けていたいと思うのです。