はてなの毎日

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都市を抽象化すると

 町田市立国際版画美術館で開催中の「シリーズ現代の作家  追悼・木村利三郎」という企画を観てきました。展示室は一室の小企画ですが、私としては見ごたえがありました。

 スクリーンプリントという手法を用いた作品の多くは都市を抽象化したもので、写実からは遠い観念的な作品です。高層ビルの無機質さをさらに抽象化して、そこにある秩序と乱雑さを強調して見せた作品に注目しました。考えてみればビルディングはそこに暮らしたり、働いたりする人々の個々の生活の場であるはず、それが一つの建物として見える時には無機質な物体として現れます。それが集まると都市になり、さらに物質性は増します。そこに住む人の姿はどんどんわからなくなり、コンクリートの塊が並ぶ風景になるはずです。

 木村利三郎の作品はそれをもっと抽象化したものです。すると不思議なことに人間は一人も描かれていなくても、建物自体が生命感を帯びて見えてくるのです。整然と並ぶようで少し乱れてならぶ建物、あふれだすビル、爆発、そして円環。作家の想像の中で都市は変容していくのです。

 このほかにもイマジネーションを掻き立てられる作品が並んでいました。こういう作品は見方によっていくらでも解釈が変わりそうです。それが面白いのかもしれません。この展示は4月9日までで、入場料は無料です。