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紙の上のいきものたち

 町田市立国際版画美術館で開催中の「紙の上のいきものたち!!」を観てきました。動植物が刷り込まれた版画作品を集めたものです。展示は4つのテーマからできていました。まずは細密画の中に描かれた動物です。写真のない時代には版画がその役割を果たしていたのですが、動植物の微細なスケッチがいまとなっては芸術のように見えることがよくわかりました。なかには植物の乾燥標本をもとにその生態を復元しようとしたものや見たこともない動物を想像して書いた絵もありました。どう見てもモンスター以外には見えない空想画もあるのです。そこにはすでに芸術の芽があります。動植物を科学的にとらえようという視点が生物の版画を発展させてきたことが分かります。

 二つ目は寓話の挿絵としての動物たちです。聖書や子供向けの寓話を題材とした話のなかには擬人化された動物がしばしば登場します。それをテーマとした版画作品があります。あるものは物語の挿絵として、あるものは独立した絵画作品として描かれました。人間の喜怒哀楽のすがたや、愛憎劇を動物の姿で描くことは生活の客観視であり風刺でもあります。宗教上のエピソードの絵画化はもちろん、道徳上の徳目を可視化する絵画は表現の可能性を考える材料になります。

 三つ目は犬猫の版画を集めたもので、それぞれの解説が面白いものでした。

 四つ目は現代の作家たちが描いた動物が含まれる版画の数々を並べたものでした。動物が身近な存在となり、恐怖や信仰の対象ではなくなった時代にどのように描かれているのかをそれまでの展示作品と見比べることができます。個人的には胡子修司氏の幻想的な作品に注目しました。また町田にゆかりのある竹上妙さんの作品も版画のもつ温かみを感じさせる作品です。

 この展示もそうですが、この美術館は見せ方がたいへんすばらしい。見せる側の意図が分かりやすく伝わります。