はてなの毎日

日々の思いを、思うまま

急な雨に

 午後ににわか雨が降ることは予報で知らされていました。次第に雲が黒く厚くなり、それでもすぐに降るわけでもなさそうなそういう天気でした。訳あって初めて歩いていた町を、スマートフォンのナビゲーションを頼りに進んでいると、少し急な坂道に差し掛かりました。

 少し登った頃にいきなり大粒の雨が降ってきたのです。私はカバンの中にあった折りたたみ傘を取り出して広げると、雨は瞬く間に傘に音を立てて濡らしていきます。あっという間に雨具はその本来の役割を果たすことになるのでした。

 その時、前方から若い女性が下りてきました。学生ではなさそうでした。夏らしく薄く白い生地のブラウスに、薄めの色の短めのスカートです。雨が降るのに慌てることもなく、傘もさしていません。駅まではそう遠くはないのでこのまま歩いていくのでしょうか。ちょっと困った感じで空を一瞬見たようなそぶりをしましたが、歩みを止めることも緩めることもありません。

 傘を差しだしたい気持ちにもなりましたが、さすがにそれもできません。すれ違っていくその人はとても美しく感じました。化粧で飾ったわけでもない、高価な衣服のせいでもない、素朴な異性としての魅力です。

 絵を描く人や小説を書く人はこうした感動を表現しているのかもしれない。そういうことを感じる一瞬でした。