はてなの毎日

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らしさ

 過去の経験で得られた一種の典型例を基準にして私たちは物事を考えます。始めは目印のようなものですが、次第にそれが規範になり、逸脱すべからざるものと考えられるようになります。

 「らしい」という形容詞をつくる言葉はこの意味で用いられます。この男らしいは男という規範に叶うことを示します。こういう表現の「らしい」の前の部分は大抵の場合、正しく定義することは難しく、また合意もないまま使われます。各人にとってのらしさが使っていくうちに修正され、最大公約数的にまとめられていくのです。

 助動詞の「らしい」が確度の高い推量で用いられるのは、この語の背景を説明するのに好都合です。そう思っているけれども断定はできないという語感を持っている音の響きがあるのです。

 先入観にとらわれずものを見ること考えることは容易ではありません。いくつものらしさが私たちの脳裏をよぎるからです。また、それがなければそもそも何も見えない。意識的に敢えて遠回りして物事を見ることがわずかに現状打破の可能性を拓くのです。