独り言の文化
土佐日記の有名な冒頭部分は女性が男の習慣である日記を書くという宣言から始まっています。この作品が女の文字であったかなで書かれていること、実作者が紀貫之という男であることなど、いろいろな屈折があります。
さて、先に宣言と書きましたが、これは作品の世界の中では独り言の形をとっています。作者はもちろん、誰かに読まれることを前提にしているのでしょうが、少なくともその表現は独り言の形です。
日記というスタイルは基本的に独り言で成立していると言えます。読者はおそらく自分自身なのです。
現代のブログも基本的には独り言であって、多くの場合、具体的な読者を想定していません。最近は「つぶやき」とも表現される刹那の思いはますます独り言に近いものです。
ネットに乗せた壮大な独り言こそ、現代文化の象徴と言えそうです。