はてなの毎日

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上昇志向のヒロイン

 NHKの朝のドラマ「あまちゃん」は最近のシリーズでは「梅ちゃん先生」に次ぐ視聴率を収めたようです。軽妙なストーリーと被災地支援のメッセージも込められた内容に泣き笑いの感動を生み出したようです。私は仕事の関係で数回を観ただけなのですが、それでも話の面白さにひきつけられました。

 おそらくこのドラマが評価されたのはヒロインの上昇志向が素直に表現されていたからだと思います。さまざまな困難に明るく立ち向かっていく姿が共感を生んだのでしょう。閉塞状況にある現在の日本において若者は大きな夢を見るのが難しくなっています。最近の世論調査でも現状に満足と答えた人が予想以上に多いのに、そう答えた人の実態は低賃金、非正規雇用の状態だといいます。夢が小さくなっている時代であるからこそ、逆に素直に上昇を口にし実行できるヒロインに憧憬にも似た感を覚えたのではないでしょうか。

 それとともに1980年代へのノスタルジアがアイドルという設定とともに表現されていたことも関係しています。いわゆるバブル経済の喧騒と、昭和の終わり。今から考えるとさまざまな価値観が変わった激動の時代でした。あだ花といわれてもそこに生きた人々はその後の日本のあり方と比較すれば活力に満ちていたかのように思われます。衰退の原因も同時に生み出していた時代なのですが、そういったことも含めて80年代の記憶を呼び戻してくれるような演出もこのドラマの特徴でした。

 三陸を舞台としたことにより被災地への支援にもなったといわれていますが、現実を美化しすぎではないかという声も聞きます。もちろんドラマであるという虚実皮膜の見きわめを忘れてはならないのですが、これを機に本当の東北の現状を考えることも必要でしょう。