ありのままの自分という心理
ディズニー映画のヒットもあって「ありのままの自分」という表現が注目されているようです。この表現の裏にある、「自分」つまり自分らしさとは何でしょう。他の誰にも囚われない自分を生きることのすばらしさを強調する意味においてそれはとても輝きを放つのですが、いざ自分とは何かと問われると答えが見つからない。
哲学の世界で言い古されているように私たちは他人との関係性の中で自己を形成しており、自分を自分のなかから探そうとしてもなにも見つからない。あるのは何でも吸い込みそうな暗闇ばかりです。結局、私たちは誰かに認めてもらうことによってその存在を意識することができるようなのです。
それではなぜ自分らしく生きるという言葉がこれほど魅力的なのでしょうか。それは他人との関係性をあまりにも強く意識しすぎた際に、一時期そこから逃避したいという願望が影響しているのではないかと思います。私は他人からはこのように見られているけれど、実はぜんぜん違うのだ。本当の私は別なのであると。
そして、その本人がいだく自画像のようなものを今度は他人に認めてもらいたくて、もがき苦しむのではないでしょうか。結局は他人に見てもらわなくては自己が成立しない。これは、そんな現実があることを再度痛感する過程でもあると思うのです。