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手続きの間違い

 対馬の観音寺の銅造観世音菩薩坐像が韓国人の文化財窃盗団に盗まれ、韓国に持ち帰った事件に関して、先日、現地の地裁が出した判決に驚きました。簡潔に言えば倭寇に略奪されたものであるから返却の必要はないというのです。しかもその証明はできないことを認めているのです。

 隣接する両国においてさまざまな関係が生じるのは当然であり、歴史的な文化財の移動も起こり得ます。両国間に戦争状況が発生すれば、略奪もおきた可能性は大いにあります。ただ、今回の仏像が果たして略奪されたものなのかについては全くの裏付けはありません。なぜ対馬という場所にあったのかということも考えなくてはなりません。観音寺側は李氏朝鮮時代の仏教弾圧から逃れるために仏像が持ち出されたという寺伝を述べています。そういう解釈もできる以上、一方的に略奪として司法判断までがなされてしまったことに疑問を感じます。

 そもそも文化財窃盗の罪をまず重視しあるべき場所に返すのが、第一にやらなくてはならないことでしょう。韓国側は返却すると仏像が消滅して二度と取り戻せなくなると主張しているということですが、これは数百年にわたって尊崇してきた対馬の寺と人々に対する侮辱です。

 韓国で生まれた仏像を里帰りさせたいと願うのならば、時間はかかってもまずは文化的な交流を深めなくてはならないでしょう。聞くところによるともともと対馬市は親韓的な風土があって、交流を進めてきたといいます。学問的に完全に証明することは難しくても、研究をし、さらに同じ仏を祭る人同士の心の交流を深めた上で里帰りを要求し、対馬側もそれを認めるという段階があれば、文化財の移動があってもよいのかもしれません。

 韓国は大統領が失脚したり、外交問題に閉塞感があったりして、国民の感情が平穏ではなくなっているようです。政治経済の閉塞の時、救いになるのは文化交流のはず。その方面まで政治の論理で塞いでしまうということは危険な事態だと思うのです。