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「童謡とわらべ唄」

 町田市民文学館ことばらんどで開催中の「童謡誕生100年 童謡とわらべ唄 -北原白秋から藪田義雄へー」を観てきました。白秋は童謡の作家として有名ですが、町田市民文学館がこの展示を企画したのはその高弟である藪田義雄の事績の紹介にあるといえます。

 白秋は鈴木三重吉の「赤い鳥」の活動に参加し、日本における童謡というジャンルの確立と芸術性の発展を志したようです。展示品には三重吉に送った童謡に対する熱い思いを綴った書簡や、追随する類似誌に掲載された作品が童謡としての資格がないものであることを訴えるやや過激ともいえる情熱を示した文面がありました。白秋の人生自体は童謡の内容のような穏やかなものではなかったようで、数々の困難を克服したうえであの境地にたどり着いたことが分かりました。

 その白秋がたまたま小田原にいたころに面識を得たのが藪田義雄です。その最初の出会いは義雄が16歳の時であるというのですから驚きです。それ以来、白秋を詩人としてはもちろん、人間的な師として仕えていきます。その後、白秋の秘書となりその創作を支えました。白秋の夢であったわらべ唄の収集や研究は遺志をついだ義雄らによって継続され、『日本伝承童謡集成』としてまとめられます。

 義雄は晩年、町田市に住み、白秋の顕彰活動とともに自らも詩作を続けます。その作品は白秋に似て日本語の流麗な調べを大切にした優しい作風であるといえます。生きた時代が異なることや目指したものに違いがあるせいもあり、私は義雄の作品には生活感があると思います。

 展覧会は6月17日までで入場無料です。詳しくは町田市のページで。