時代おくれの価値観から

　あたかも先が見えているような未来予測がさまざまな形でなされています。その中で効率化能率化が求められ、結果として人間疎外も起きつつあります。皮肉なことに、我が国の産業界に瀰漫するのは人手不足という問題です。人は要らないのに人が足りない。逆説めいた現実が事態を複雑にしています。

　古い価値観によるものの見方や行動様式には何かしら問題点が内包されています。であるからこそ古くなったのであり、置換されたのに違いありません。ただしその中に失ってはいけなかった要素も含まれていた可能性があります。

　温故知新は故人の知恵です。古いものの考え方に未来を拓くヒントが必ずあるはずです。古典学習をこれまでのあまり功利主義的に捉えたことはありませんでした。また、そういう見方を邪道かつ不適切と考えてきました。しかし、閉塞感漂う現在には先祖の言動のあとを確かめることが一つの突破口になるかもしれません。