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歴史を巡る感覚の違い

 韓国歴史ドラマはとてもおもしろいと思います。波瀾万丈なストーリーと美男美女の配役、さらには登場人物の衣装がきらびやかです。演技もはっきりとしていて分かりやすく誰もが感情移入しやすい。その一因は、韓国の歴史ドラマの作り方がかなり自由であり、史実にこだわることがないという点にあります。そもそも史料の残らない時代のことはもちろん、歴史時代のことでもかなり大胆に脚色し、別の時代の出来事を持ち込んだり、現代的な恋愛劇をそのまま持ち込んだりします。逆にそういうひねりがないと受け入れられないようです。韓国歴史ドラマが日本でもかなりの人気を誇るのはこうしたわかりやすさにあるのではないかと思うのです。朝鮮半島の歴史を全く知らなくても楽しめるのです。極論を言えば韓服を着た現代劇ともいえます。
 対して、日本の歴史ドラマは概して不振が続いています。NHK大河ドラマがどんなに人気俳優をキャスティングしてもふるわないのが象徴的なようにどうもうまくいきません。日本のドラマは史実に近い形での演出をすることが原則で、演技も衣装もあるいは台詞回しも現代物とは異なるものにしようとします。だから、歴史の知識がある者にはおもしろいけれども、それがない人には意味すら分からないということになります。はっきりとそれとしれる脚色をすると、少なからぬ人があれはおかしいという声を上げます。ドラマが史実通りであるはずはないのですが、少なくとも歴史そのものを重視している姿勢がないものは評価が低く、非難の対象にすらなります。だから逆に歴史の知識的な裏付けが失われかけている昨今の日本人伝統的な歴史ドラマを楽しむには敷居が高いといえます。
 創作と事実を混同してはいけないことを重々承知で述べますが、ドラマの世界では歴史の改変に対して寛容な韓国と、意図的な脚色を好まない日本という対比があるのです。歴史の解釈がしばしば問題になる両国ですが、時代劇の楽しみ方が対照的なのは興味深いと思います。