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はてなの毎日

日々の思いを、思うまま

音を描く

 恩田陸『蜜蜂と遠雷』はピアノコンクールそのものを小説にするというユニークな作品です。直木賞受賞作品ということですが、なるほど読み応えのある娯楽小説にもなっています。

 書評については別のブログに記しましたので、今回は音楽の文字による描写という観点で考えてみます。音を文字にすることは実はかなり難しい。音自体には言語表現は伴っていませんし、すぐに消えてしまうのが特徴です。すると、何か音以外のものに譬えるしかできません。明喩が基本になります。

 単調な音声でもそうですから、演奏になるともっと話は複雑です。しかも、芸術的レベルの高い演奏の描写は、ある意味言語表現の対極にあるとも言えるでしょう。言葉にならないほどの感動をもたらすのが名演奏なのですから。

 ただ、まったく言語化できないものはそもそも感知できないのだとも言えます。うまく言いあらわせないけれども、確かにあるイメージを想起させて、それらがいままでにない形で組成されている状態があるのでしょう。個々の部品は言語化されているのに、文にはならないといった感じです。

 『蜜蜂と遠雷』でも演奏の描写は音そのものの描写ではなくなっています。この小説の読みどころはまさにこの部分だと思うのです。

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