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映画 舟を編む

 三浦しをんの小説を映画化した「舟を編む」を先日観てきました。仕事にかける情熱を描いたいわゆる「お仕事もの」ですが、それが辞書編纂という特殊な内容であることがこの映画のウリです。

 ユニークな中型国語辞書の編纂に情熱をかたむける出版社社員の人間模様を描いていました。辞書作りは地道で根気の要るものであり、さらに間違いが許されない繊細な仕事といえます。またそれぞれの辞書には個性があり、書かれている記事も辞書によって違うものなのですが、一般にはそれがあまり知られていない。そんな現状も作中に描かれていました。

 辞書はことばを扱う本ですが、主人公はそのことばを現実生活ではうまく扱えない学究肌というよりオタクの性格です。それを松田龍平が抑えた演技で好演していました。先輩役のオダギリ・ジョーも持ち味を出していまいた。二人は今回の映画では今までとはかなり違う役どころです。ヒロインの宮崎あおいはその点、彼女の素材そのものを役に生かした感じです。

 編集監修者の加藤剛の浮世離れした学者的な演技や、熟練の編集者役の小林薫など、ベテランの演技も軽いタッチのこの映画に説得力を持たせるいい役割を果たしていました。

 私自身もかつて辞書作りを夢見ていたところがあり、若いころの自分の夢と重ねて観てしまったところもあります。波乱万丈とか愛憎とか、生死の駆け引きとかいったものはありませんが(作中に恋愛や人の死はあります)、淡々と描かれる仕事にかける人々の姿が心地よい映画でした。