はてなの毎日

日々の思いを、思うまま

白いギター

島村楽器のお題「楽器に関する思い出」
 私の数少ない長く続いている趣味にギターの演奏がある。といっても実際はCとかAmとかのコードを鳴らすだけであり、弦楽器というよりは打楽器的な演奏しか出来ない。でも、適当に歌をつけると伴奏しているように感じられるからギターは魅力的だ。
 私が最初に手にしたギターは白いギターであった。確か中学1年生の時だ。実はそれはゴミ捨て場から拾ってきたものだった。いま思えばクラシックギターの上に白いペンキを無理やり塗りつけたもので、およそ楽器として体をなしていなかった。ファッション関係のショーウィンドの小道具として使われていたものと思う。弦も張られておらず、そのままでは演奏できなかった。私はそのころ流行っていたいわゆるニューミュージック(つまりは歌謡フォーク)に心奪われ始めていたときだったし、いつかギターを弾こうと考えていた時だった。ゴミ捨て場で小さな楽器を見つけた時のときめきは今でも忘れない。
 持ち帰った後、早速ギターについて調べ始めた。といっても今のようにインターネットで検索するといった便利なことはできない。周囲の人に聞いたが誰も知っている人がいないので、図書館に行ってギターの仕組みを調べたり、近くの楽器屋で商品となっている本物の楽器を見たりした。そして小遣いをはたいて買った教則本をもとに弦を買い、あやしげなチューニングして何とか演奏を始めた。この時点で実は大きな間違いをしていた。張った弦はフォークギターの弦だったのだ。ピンがないのにどうやって留めたのかについては思い出せない。
 それからは優しい曲を中心に練習を始めた。セブンスなどの難しいコードはすべて無視、当時はどうしてもできなかったFやBmなどのセーハのあるコードも無視して、時々無音になる不思議な伴奏でやはりの歌を歌ったのだった。
 現在は、私にしては少し贅沢なギターを週に一度鳴らすのが楽しみになっている。あの頃に比べて覚えているコードは増えたし、アルペジオやスリーフィンガーもまがりなりにはできるようになった。でも基本的にはそれほど進歩はしていない。下手くそなままである。ただギターを抱えると、あのいかがわしい白いギターに心躍らせていた中学時代に瞬時にタイムスリップできる。その意味でギターは私にとって時空を飛び越えることができる貴重なものなのだ。