自己俯瞰力

　学習の目的の一つであり、なおかつもっとも難しいのが、自己のあり方を俯瞰する力であると思います。私たちは自分の目で見、耳で聞いたことを頼りに世界を把握しますが、それをいわば神様の視点で見下ろすことは口で言うほど容易ではありません。どうしても独りよがりになってしまいます。
　学習は結局自分以外のものの考えかたを、自分の物とすることを目指すものであり、最終的には自分を外側から見ることを目指すものだと言えるでしょう。私は古典の学習を通してそれを学ぼうとし、教えるときにはそれを意識して話します。
　私は演劇が好きなので、物事を舞台にたとえますが、演じている自分が舞台上でどんな位置にいるのか。それを見ている人が、自分の演技をどのように見ているのかを考え、考えさせることが私の仕事だと思うのです。