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新幹線の運ぶもの

 来年の3月には開業するという北陸新幹線の線路がついに金沢までつながったそうです。首都圏との直線距離が近いのに地形上の理由で時間がかかってしまう北陸地方にとって新幹線は新たな可能性を秘めたものとして概ね歓迎されているように思えます。

 ただ、よく言われていることではありますが、この路線がどのような役目を果たすのかについてはかなりの疑問と課題があると私も考えます。新幹線は航空機よりも輸送量が大きく、何よりも天候による運行停止の可能性が低いことが魅力です。実質的にも心理的にも常に首都圏につながっているという感覚をもたらしてくれるものです。これは地方に住む人たちにとってはかなりの影響力がある事実です。

 宇奈月温泉や高岡、金沢などいわゆる観光資源のある地域では首都圏からの観光客の増加を見込んでいると思います。そして、おそらくそれはある一定期間は達成されるでしょう。いままで北陸地域に関心がなかった人たちに注目させるにはこれほどいいきっかけはありません。今まで観光資源においては他の地域に劣っていると考えられていた富山市もこれを機に何かを仕掛けてくるかもしれません。

 ただ、だれもが危惧しているのはこの新幹線がむしろ最終的に東京への吸引力を促進してしまう結果になるのではないかということです。もともと北陸の人たちは県外に出て立身出世をするという伝統があり、18歳人口の県外流失率が非常に高い地域です。高校を卒業したあと関東や中京、関西の大学や専門学校などに進学し、そのままその地域で就職するという人たちが一定数、それも高い割合でいるということです。新幹線の開通が首都圏への道筋を太いものにすることにより、この人口流出はいっそう激しい物になることは確実でしょう。

 先日発表された将来消滅する可能性がある自治体の候補に北陸地域の市町村も多数含まれていました。人口減少の国家においては首都圏に人口が集中し、結果として地方との生活格差が著しくなっていまうようです。すると、新幹線の開通をただ単に祝っているだけでは自らの墓穴を掘るようなもの。人口流失を防ぐための様々な事業なり、文化活動なり、意識改革なりをしていかなければならないのではないでしょうか。