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英語の民間試験導入にまつわる問題

 今朝の読売新聞の一面トップは<国立大「マーク式と民間」>でした。2020年度から大学入試が大きく変わり、センター試験は「大学入学共通テスト」と呼ばれるようになります。変更点の特徴の一つが英語の「話す」「聞く」といった技能への評価の拡大です。「聞く」試験に関してはリスニングテストという一方通行の聞き取りながらこれまでも行われてきました。実施が難しい「話す」能力の測定に関して英検、TOEFLなどの民間の検定の利用が提唱されているのです。今日の報道によると全国立大学に民間試験利用が課される方針が決まったとのことです。

 この件に関して、読売新聞では受験生の費用負担の問題を挙げています。共通テストの受験料負担に加えて民間試験の受検料を支払うことが義務づけられるのです。記事によるとその受検料は5,000円から25,000円です。例えば過去に英検1級をとっていたとしても判定の材料になるのは高校3年4月~12月であり、2回までの受検機会が許されているといいます。単純に考えると最高級(もしくは得点)に挑戦するため50,000円の追加出資をする受験生が発生するということになります。経済格差をさらに生み出す要因であると指摘されても否定するすべはないはずです。

 英語の教員とこのことを話したところ、話はそんなに簡単ではないとのことです。都心には複数の民間検定試験があり、受検機会が確保されているものの、地方では試験会場がない地域も多いとのことです。その地域にすむ受験生たちは交通費を支払い、場合によっては宿泊までして試験を受けなくてはなりません。すると出費は50,000円どころではなくなるのです。まとめると新制度は金持ち有利、都会生活者有利ということになります。

 こうした条件はもちろん現在でも存在しています。しかし、今回の受験制度の変更によってそれがいっそう明らかなものになってしまうことになります。親の収入や住んでいる地域で学問に接する機会が決められてしまう状態はよくありません。地方創生などと一方で掛け声をかけても、この状態が続けば地方を捨てる人が増えるのは当然の成り行きでしょう。

 そこで何ができるでしょうか。英語の技能判定に会話力が必要なのは分かります。その能力を測るのを民間の検定とするならば、まずはどの検定を利用するのかを決めなくてはなりません。選ばれた検定機関は毎年決まった受検生を確保できる訳ですから、飛躍的な収入増が見込めます。当然、そこには注文をつけなくてはなりません。まずは大学入試として利用する場合は、受検料をできるだけ安価に設定してもらうことです。国による補助は最小限に抑えなければなりません。また、受検会場の設置数、分布に関しても条件をつけるべきでしょう。

 さらに、本当に民間機関でないとできないのかも考えてみなくてはなりません。各大学が一定の認定基準を設定すれば、そこに属する教員などで実施することも可能なのではないでしょうか。そういう選択肢もあるべきです。この問題は今後の日本の在り方に直結する問題だけに多くの人に関心を持ってほしいことでもあります。