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歴史の意味

 ユネスコの世界記憶遺産に「南京大虐殺」が認定されたことが報道されました。大虐殺という事実があったのかという根本的な問題を含む積年の議論がある歴史上の事件が、第三者により認定されたことには様々な意味があります。

 大虐殺の事実があったのかについてはやはりわからないとしか言いようがありません。今に残る歴史資料や証言を見る限りどちらにも考えられるからです。ただ、戦時中の混乱で非戦闘員への暴行、殺害があったことは事実であり、この点について踏まえた上での論争にしなければなりません。記憶すべきは戦争がもたらす人間の残虐性です。

 世界記憶遺産の目的が何であるのかを考えれば、すべての戦争の悲惨な記録を登録すべきということになるでしょう。おそらく、この次には中国の政府にとって都合の悪い「史実」も出てくるはずです。記憶したい主体が誰なのか、誰に記憶させたいのか、この世界記憶遺産登録の問題は常にそこにかかっているのでしょう。

 歴史は勝者、もしくは多数派が書き残すのもであり、敗者、少数派の生きた記憶は矮小化または誇張され、時に修正されます。南京での事件の罪の軽重だけに議論がとどまらず、人類としての戦争の無意味さや、もたらすものの悲惨さを論ずる流れになってくれることを望みます。