はてなの毎日

日々の思いを、思うまま

経験なき実感

  戦中を扱った小説を教える時、戦後世代の私がいつも考えるのは経験のない恐怖感や閉塞感をどのように伝えたらよいのかということです。爆撃を受けたことのない私にとって煙幕も爆風も肉をつんざく銃弾の音もすべて想像であり、多くの場合は映画などで再現された特殊効果のそれでしかありません。説明をしようとすればするほど嘘になりそうです。
  作品にすべてを任せる手があります。それがもっとも大切なことではずしてはなりません。しかし、果たして過去の実感が伝わるのだろうかという心配もあるのです。
  戦後書かれたその手の小説やエッセイは戦後世代が読むにしても、戦争の体験者の声が届く環境にありました。私も父から焼夷弾の炸裂した時の恐怖に関して耳にしたことがあります。家族、親戚を通して間接的にも戦争を感じることができる家庭はいま急速に減っています。
  いまできることは自分がその家族の役割を果たすことなのかもしれません。父や義理の祖母から聞いた話を伝えることこそいまできることなのでしょう。まだ自信はありませんがやってみるしかありません。
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