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教科書に載っている古典(6) 隗から始めよ

 敗戦した燕は太子の平を王位に即けた。これが昭王である。王は戦死者を弔い遺族のもとを慰問して回った。また、自らへりくだり、待遇を厚くして賢者を招聘した。

 ある日、家臣の郭隗に王は次のように言った。

 「斉は我が方が内乱を起こしたすきに来襲して燕を破った。私は今はこの燕が小国で反撃ができないことを痛感している。賢臣を得て国政を共に執り、先王の恥辱を雪ぐのが私の心からの願いなのだ。あなたはこの任にふさわしい人材をお知りか。私はその方を師として仰ぎ敬い、お仕えしたいと思うのだ」

 隗はこう答えた。

 「古の王に、家来に千金を託して一日に千里走るという名馬を探させた方がいらっしゃいました。家来は死んだ馬の骨を五百金で買って帰りました。王は怒りました。その時家来は答えたというのです。『死んだ馬でさえ高価で買い取ったわけですから、まして生きた馬ならどれほど高値で売れるものかと思う者がいるはずです。名馬はすぐに手に入れられることでしょう』と。果たして一年も経たぬ間に名馬は三頭も集まったのです。

 もし王様がどうしても立派な人材をお求めになられるというのならば、まずこの私、隗からお始めになられるとよろしい。この隗よりも賢い人材がどうして千里の道のりを遠いと考えてあなた様のもとに身を寄せに来ないはずはありますまい。」

 そこで昭王は隗のために宮殿を改築し、彼を師として仰ぐことにした。その後、有能な人材は競って燕に集って来たのだった。

(『十八史略』)