はてなの毎日

日々の思いを、思うまま

懐古癖

 私が意図的に戒めているのが懐古癖です。昔はよかったという思いは容易に浮かぶのですが、その実は異なると思うのです。

 昔が良かったと思うのはいまを生きているからです。いま生き残っているからこそ、昔の方がよかったなどと言えるのです。昔は昔でいろいろな苦労があり、未来につなぐための様々な試行錯誤をしてきているのに、そのことは記憶から全く抜け落ちてしまうのです。これは実に不思議なことです。昔の方がよかったと思うのはこの苦しみの脱落のゆえです。

 それを乗り越えて今があるということを冷静に考えれば、過去のある時期を理想的な時代と考えるのは明らかに間違いです。ただ現状が苦しければ苦しいほど過去の幸せな時代を理想化するのは自然であり、それが未来への原動力になることも確かにあるのです。私たちは理想を追うことにあまりにも臆病になり、現実の壁を過大評価しています。

 理想的な状況は過去ではなく未来にある。そういう信念をいまはもっとも必要とされています。