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韓国時代劇の男装のヒロイン

 韓国の時代劇を見ているとしばしば男装するヒロインが登場します。様々な事情で素性を隠さざるを得ないヒロインが幾多の苦労の末、男として生活し、さらなる苦難を乗り越え、最終的には女として生きるといった話がかなり多くあるのです。

 このような状況は特殊であるべきものですが、実際には繰り返し使われています。日本では演劇のモチーフとしてはありますが、テレビドラマではあまり見かけません。日本の時代劇は創作でありながら史実にもとづいているという前提で作られることが多く、それなりのリアリティーを要求します。もちろん史実ではないのですが、それらしく見えることが前提なのです。

 対して韓国の時代劇ではエンターテイメント性の方が重視されます。きらびやかな衣装やセットなど史実にはとらわれません。男装するヒロインが、その容姿容貌から明らかに女に見えるのにそれが露見することがないという不自然な設定にも違和感を覚えることないのは、ドラマの視聴者が史実よりも話の面白さを好む風土があるからです。美人女優が男の扮装で活躍する設定は演技を楽しむ目的にはふさわしいものであり、女優としては演技の幅のみせどころになっているのでしょう。

 もう一つ考えられるのは、日本と同様、韓国の歴史にも女性が主導権を握った時代が限られているということが関係ありそうです。実際には歴史の表舞台に立てなかった女性を主人公にするためには、彼女たちが男として生きる道を選ばざるを得ないのでしょう。大統領こそ女性になったものの、韓国において女性はいまだ社会的地位は低く、それ故に性差を超えて活躍する女性の姿をドラマの中で実現することが、現状へのカタルシスの役割をしているのかもしれません。