はてなの毎日

日々の思いを、思うまま

歌物語を書かせる

 中学生向けの古典の授業として歌物語を書かせるということをやってみました。伊勢物語や大和物語を勉強したあと、このジャンルの文学の特徴を直感的に分からせたかったのです。

 まず紙を配り、そこに自作の歌かもしくは既成の歌を書かせます。それを回収してシャッフルして配り直します。書いてある歌がどのような事情で作られたのかを想像し、席の近くの人と話し合いながら意見をまとめ、それをストーリーにまとめます。誰かが選んだ歌についての話を創作しなくてはならないことになります。

 これは古歌が伝承されていくうちに成立事情が分からなくなり、後世の人がそれを想像し歌語りを続けていくうちにストーリー性を帯びて、短編物語として完結する様を、教室内で短時間に再現したつもりなのです。

 この方法によれば創作の経験がなくてもストーリーが書きやすい。我が国において古くから神話を離れた散文学が発展できた要因の一つが歌物語の実践があったからだと思うのです。もちろん日記文学による内省の習慣もこれに複合するのですが。

 この試みは古典の時間に現代文の作文をさせるということで、少し抵抗感がありました。しかし、日本の文学において和歌が果たした役割を説明抜きに分かってもらえる方法の一つだと思っています。